「ブルックス ブラザーズ(Brooks Brothers)」のウィメンズクリエイティブディレクターを務めるザック・ポーゼン(Zac Posen)さんは「腰に手を当てるな」と指導していましたね。あれは構築的なジャケットを着用しているときに言った言葉です。ジャケットを身につけて腰に手を当てて歩いたら、バストのところが広がってしまい美しく見えません。あの時に最も評価が高かった岡本(岡本百恵)は腰に手を当てましたが、なぜ良かったのかというとボタンを外したから。前のボタンを外して中の服を見せるために、腰に手を当てる必要があったんです。
 一方で桂由美さんが作るドレスは、腰に手を当てた方がウエストのラインが美しく見えます。肘下にフリンジがあるドレスを着用した生徒がいましたが、腰に手を当てないとフリンジが綺麗に下がらないんですね。"腰に手を当てるな"の言葉を鵜呑みにして、服によって応用するなど自分なりの解釈ができていなかった。なぜそう言われたかの「なぜ」を考えなかったばかりに、桂由美さんの時には誰も腰に手を当てずに、全員やり直しになりましたから。
よくよく考えれば当たり前のことなんですよ。ザック・ポーゼンさんと桂由美さんが違うように、デザイナーは同じ服を作っていませんから。この時は1本あたり8〜9時間のロケをして10分の映像にまとめられていますが、オンエアされていないところで生徒達はもっと細かく指導されているんですよ。ザック・
ポーゼンさんも「腰に手を当てるショーもある」と言っていましたから。デザイナーが違えば言うことが違うのは当たり前。だから全てのデザイナーの服に対応できる"自分"が大事で、それをいかに表現するか。パリコレ学はそのための授業だと私は考えています。